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出版取次とは?出版取次の具体的な事業・業務内容を分かりやすく説明します

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出版取次は出版社と書店をつないで本を流通させる仕事:

出版取次(しゅっぱんとりつぎ)とは、本を編集する出版社と、本を売る書店をつなぐ仕事です。

出版取次のビジネスをしている会社のことを取次会社といいます。

一般の小売業では卸業となりますが、本業界ではこれを「出版取次」と呼んでいます。

取次業者は本に関わる5者のうちのひとつ:

本に関わる人・企業は、次の6つです。取次会社はそのひとつとなります。

1. 本を執筆する著者
2. 本を企画・編集する出版社
3. 本を印刷して製本する印刷会社
4. 出版社と書店をつなぐ取次会社(卸業)
5. 本を陳列し一般客に販売する書店
6. 本を買って読む読者

これを概念図で示すとこうなります。

出版社

(企画・編集)

(本の販売)

取次会社

(卸)

(本の販売)

書店

(本の陳列)

(本の販売)

読者

(本の購入)

↓印刷と製本依頼 ↑完成した本の納品
印刷会社

出版取次はなぜあまり知られていないの?:

「本に関係する会社を挙げよ」といわれて、真っ先に思い浮かぶのは出版社書店ではないでしょうか。

出版社はマスメディアの機能も持っているので、世の中に登場することが多く認知度が高いですし、書店はなじみある商業施設です。

出版社や書店と比較すると、取次会社は知られていない地味な存在です。

本を創造することもなく、本を読者に届けることもありません。

ただ、取次会社だけではなく、得てして卸売業というのは地味な存在です。

食品にも薬にも卸業者がいますが、いずれもあまり世の中には知られていません。

一般的に知られている卸売業者といえば、有名5大商社の三菱商事三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅くらいでしょうか。これらの会社が知られている理由も、就職活動で人気な企業だからですよね。

例えば、世界の穀物の6割をコントロールしていると言われているカーギル社は、社員が15万人以上いる巨大企業ですが、恐らくこの記事を読んでいる99%は知らないと思います。

卸売業はそれくらい世に知られづらい存在なのです。

ちなみに出版取次業界は日販トーハンという会社が2強で、2社で7割以上のシェアを持っています。聞いたことはありますか?

地味だけど本業界をしっかり支えている取次業者:

出版取次の仕事は地味ですが、本業界と国民の知る権利をしっかり支えています。

もし出版取次の仕事がなかったら、書店は本を仕入れるとき、一回毎に出版社に注文しなければなりません。

出版取次は、書店の仕入れ作業を効率化しています。

またもし出版取次がなかったら、出版社は本を売るとき、1冊毎に書店に営業をかけなければなりません。さらに本を販売するときも、書店1軒毎に本を送らなければなりません。出版取次は、出版社の営業と販売を効率化しているのです。

出版取次が存在することで、出版社は本を編集することに注力でき、書店は販売に注力できます。

その結果、読者は良書を簡単に手に入れることが出来ています。

「代金の前払いと返品」という機能:

出版取次にはそのほかにも、代金の前払いと返品という重要な機能があります。

国民の知る権利は日本国憲法にも書かれてあるくらい重要な権利です。それを支えているのが本です。

本には「売れる本だけがよい本とは限らない」という性質があります。

専門書などの「難しい本」は、ほとんど専門家にしか売れませんが、それでも人類の英知を維持して高めるためには編集し続けなければなりませんし販売し続けなければなりません。

取次会社は、売れない良書をストックしておくことができます。

こうしておけば書店から注文があったらすぐに売ることができます。

取次会社は本を仕入れたら、その代金を出版社に支払います。

つまり出版社は、本が読者に届く前に本代を回収することができるわけです。

その資金で出版社はまた本を企画・編集することができます。

では、まったく売れる見込みがない本だった場合はどうなるのでしょうか。

その場合は、書店は売れ残った本を取次会社に返品します。

このとき書店は「取次会社に本を売却する」形をとります。

そのため書店と取次会社は、事前に「返品時の買い取り」について契約を結んでおきます。

取次会社に返品された本は、最終的には出版社に戻り、出版社はその分の代金を取次会社に支払わなければなりません。

したがってやはり「売れない本」ばかり編集している出版社は淘汰されることになります。

取次会社を通さない取引もある:

出版取次の流れは、以下のとおりでした。

出版社

(企画・編集)

(本の販売)

取次会社

(卸)

(本の販売)

書店

(本の陳列)

この取引では、取次会社は取次料を徴収しているので、出版社と書店の収入はその分減ります。

そこで出版取次を経ずに、出版社と書店が直接取引することもできます。

出版社

(企画・編集)

(本の販売)

書店

(本の陳列)

こうすることで出版社は本を高く売ることができますし、書店は安く本を仕入れることができます。

もしくは、出版社と書店がこれまで通りの利益しか取らなければ本の販売価格を安くできるので読者に喜ばれます。

しかし出版社と書店の直接取引は次のようなデメリットがあります。

■取次業者を通さないデメリット:

・出版社は売れない良書を売りにくくなる
・そのため出版社が売れない良書を編集しなくなる
・出版社が売れ筋の本を大量に販売してくれる書店にしか売らなくなる
・小さな書店は売れ筋の本を仕入れにくくなる

これらは読者にとっても大きなデメリットになります。

このことからも出版取次が、出版社、書店、読者に貢献していることがわかります。

ITの進歩でで取次業は消滅?:

なお本業界は人々の本離れによって苦境に立たされていて、それは取次会社も同じです。

しかも本のネット通販や電子書籍が「出版取次要らず」を助長しています。

また、本を買わずにネット記事を見て完結する人も増えてきました(今のあなたがそうですよね)。

ここまで出版取次について説明してきましたが、出版取次業界は徐々に淘汰されていく存在かもしれません。

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