本出版希望者必見!出版社の仕事を編集者が解説します その3
編集者は、原稿を依頼すると、今度は営業部と打ち合わせをします。
原稿を依頼したということは、すでに編集会議は通っていますので、おおよその部数や発売日は決まっています。
ですから、このタイミングで営業部と打ち合わせをするのは、部数と発売日に大きな変更がないかの確認と、著者の可能性について話し合うためです。
もし、著者が本を別の切り口でも書ける場合は、テーマの変更も視野に入れます。
というのも、本の販売部数は、テーマを少しズラしただけで大幅にアップするからです。
たとえば、「元アイドルの主婦が作ったアジア料理20選」という本の場合、「元アイドルの主婦」にスポットを当てると、5000部しか書店が注文してくれなかったのに、「アジア料理20選」にスポットを当てると5万部の注文が来たりします。
こういったことは、営業部の人から取次に聞いてもらわないと分かりません。
というわけで、編集者は、営業部と相談しながら、少しでも部数が増えるように本の内容を調整していきます。
その際、表紙を何パターンも作って、書店の注文が増える表紙も模索します。
本の内容に大きな変更がありそうなときは、著者に連絡を入れて、無駄な作業が発生しないようにします。
ちなみに、原稿の進捗状況を見ながら印刷所とも打ち合わせをしていきます。
もし原稿が遅れがちなら、早めに印刷の日程や、本の発売日を伸ばします。
なお、本の発売日は、直前で延期すると取次からペナルティを受けることになります。
出版社の慣例として、直前での発売延期は余程のことがない限りやりませんので、もし本の出版に携わることがあれば気を付けてください。
編集者は、そういったトラブルが起こらないように、自社の営業部や印刷所の担当営業、著者の意見やスケジュールを調整していきます。
それだけでなく、編集局長や経営者といった上司からの要望も(売れそうなアイデアなら)本に取り入れます。
とはいえ、要望をすべて取り入れてしまうと、何がウリなのかよく分からない本が出来上がってしまいます。
誰がなんのために買うのか不明な本だと、まず売れませんので、編集者はそうならないために、さまざまな意見から本や著者を守る必要があります。
このようなアドバイスの取捨選択とスケジュールの調整が、編集者の腕の見せどころです。
そして、すべてのページを無事印刷できれば、およそ1週間後には本が書店に並びます。
なお、印刷や搬送の際にトラブルが起こることもありますので、印刷所に入稿した後も、すぐに電話に出られるようにしておきます。
ちなみに、徹夜が続いた場合は、編集部で寝た後で家に帰る編集者もいます。編集部なら爆睡しても誰かが起こしてくれるからです。
まとめ:
編集者は、本に印刷されないところで仕事をします。
なかなか分かりにくい職業ですが、しかし、編集者のスキルによって本のクオリティは確実に変わります。
あなたのお気に入りの本も、きっと編集者が影でよい仕事をしているはずですよ。